学会非公認「救急科専門医試験問題解説ページ」

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温かい輸液で体温が上昇するか?

 低体温の患者さんが来ると大変です。色々な事をして温めないといけません。その一つに温かい点滴を入れると言うのがあります。点滴によって体温はどのぐらい上昇するのでしょうか?以下に文献を引用します。



「加温した輸液、輸血の投与により体温は上昇するか?」
 現在でも誤解している医療従事者が多いが、「38~40度に加温した輸血・輸液で体温を上昇させよう」などという大それた考えは今すぐ捨てた方が良い。例えば、核心温35度の患者に40度の輸液を1時間で1リットル投与したと仮定する。輸液から体に与えられる熱量は(40-35)(度)×1 (kg)×1(cal/kg/度)=5calなので、患者の体重を60kg、人間の比熱を0.83として計算すると、5(cal)÷60(kg)÷0.83(cal/kg/度)=0.10(度)となる。理論上の上昇温度はたったの0.1度である!
(塩崎忠彦:加温、救急処置トラブルシューティング. 救急医学 30、P.357 -360、2006より)


 そうなんです!1リットルも温かい点滴を入れてもたったの0.1度しか上昇しません。


 逆に、胃洗浄などに常温の水道水を使って低体温にならないか?という疑問が出ると思います。今の論文を逆に考えれば、、、体温の低下は軽度ですし、胃内へ入れた洗浄液の冷たさが全部体内へ入る訳ではないし、何より、温めている時間がもったいない!(って電子レンジなどですぐ温められれば、温めた方が良いですが)という事になります。


 点滴を温めるのは体温を下げないと言うぐらいの効果しかない事に注意しましょう。毛布などを患者さんにこまめに(診察や検査でしょっちゅう患者さんを裸にしてしまいますよね)かぶせてあげましょう。


 心肺停止後の蘇生の一手段としてinduced hypothermiaと言うのが提唱されています。体温を下げるために4度の輸液を入れると言う方法が有効であるとか、そうでないとか議論されています。例えばこちらの文献です。iced-sludgeと言う言葉もあるようです。


 ちなみに、上の計算式にあてはめてみます。体重50kgの体温36度の患者さんに4度の輸液を入れた場合です。
 与えられる熱量は、(4-36)×1×1=ー32calです。
 ー32÷50÷0.83=0.77度です。
 大量に入れれば軽度低体温を誘導できます。

Last updated 2018-02-28